2016年頃から続いた高級食パンブーム。行列ができるほどの人気を誇った専門店も、近年は閉店のニュースが目立つようになりました。ブームは本当に終わったのか、それとも新しいフェーズに入っただけなのか。市場の現状を整理し、これからベーカリー経営者が取るべき戦略を考えてみましょう。
高級食パンブームの盛り上がりと転換点
「乃が美」や「銀座に志かわ」といった専門店の全国展開をきっかけに、高級食パン市場は急速に拡大しました。1斤800円〜1,000円台という価格設定にもかかわらず、贈答用や自分へのご褒美需要を取り込み、フランチャイズ形式での出店ラッシュが続いた時期もあります。
しかし2022年以降、原材料費(小麦粉・バター・卵)や光熱費の高騰、さらに新規参入の飽和による価格競争が重なり、閉店・撤退する店舗が全国的に増加しました。帝国データバンクなどの調査でも、食パン専門店を含むベーカリー関連事業者の倒産・休廃業件数が増加傾向にあると報じられています。
ブームが「終わった」わけではない理由
ただし、これは高級食パン市場そのものが消滅したという意味ではありません。むしろ「単品ブームによる過剰出店」が是正され、市場が適正規模に落ち着きつつあると捉えるのが実態に近いでしょう。
- 大手スーパーやコンビニのPB商品でも「厚切り高級食パン」的な商品が定着し、専門店でなくても高付加価値の食パンを購入できる選択肢が増えた
- 贈答需要は根強く残り、地域に根ざした専門店は安定した固定客を維持している
- 「高級」の定義が価格訴求から素材・製法のストーリー訴求へシフトしている
つまり消費者の「美味しい食パンを求める」需要自体は継続しており、勝ち残る条件が変化したというのが正確な見方です。
生き残っている店に共通する3つの特徴
閉店が相次ぐ一方で、安定的に集客を続けている高級食パン専門店にはいくつかの共通点が見られます。
- 食パン以外の商品展開:デニッシュ食パンやラスク、サンドイッチなど、食パンを起点にした派生商品で客単価と来店頻度を高めている
- 地域密着型の販促:全国チェーン展開ではなく、地元の卸先やイベント出店を軸に、無理のない規模で運営している
- 製法・素材のストーリー化:産地限定小麦や国産バターなど、価格だけでなく「なぜ高いのか」を伝える情報発信ができている
逆に、価格競争と急拡大だけを武器にしていた店舗ほど、原材料高騰の影響を吸収できずに撤退を余儀なくされているケースが目立ちます。
運営支援の現場ではこう考える
パンフォーユーは冷凍パンの製造・卸を通じて、全国のスーパーマーケットやインストアベーカリーとの取引を続けています。この現場で強く感じるのは、「食パン単品での勝負」は在庫リスクと需要変動の波を非常に受けやすいという点です。高級食パンは焼き立てのタイミングで売り切ることが前提になりやすく、天候や曜日による客数変動がそのまま廃棄ロスに直結します。
実際に取引先のスーパーからも、「食パン専門店を併設したが、平日の売れ残りが課題」という相談を受けることが少なくありません。こうした課題に対しては、冷凍パン生地や焼成済み冷凍パンを活用し、需要に応じて焼成・提供量を調整できる体制を作ることが有効です。専門店単体で戦うのではなく、総菜パンや調理パンなど複数カテゴリと組み合わせた品揃えにすることで、来店動機を分散させ、廃棄ロスと機会損失の両方を抑えられます。ブームが落ち着いた今だからこそ、単品依存からの脱却が生き残りの鍵になると考えています。
まとめ
高級食パンブームは「終焉」ではなく「淘汰による適正化」の段階にあります。価格訴求だけの店舗は厳しい局面が続く一方、商品展開の幅と地域密着を両立させた店舗は着実に生き残っています。自店の強みを見直し、単品依存からの脱却を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事の監修
パンフォーユー編集部