今年も製パン業界の注目イベント「パングランプリ東京」の結果が発表されました。東京都知事賞に輝いたのは、東京製菓学校の小島堅嗣氏による「Kouglof Feuillete Pomme Cannelle(クグロフ フィユテ ポム カネル)」。伝統的な発酵菓子と折り込み生地、そしてアップルシナモンという親しみやすい組み合わせが評価されました。この結果から、私たちベーカリー経営者は何を学び、どう自店の商品開発に活かせるのでしょうか。
2026パングランプリ東京の概要と受賞結果
パングランプリ東京は、製パン技術の向上と業界の発展を目的とした国内でも権威あるコンテストのひとつです。プロの職人から製菓学校の学生まで、幅広い層が参加し、技術力とオリジナリティを競います。
2026年大会で東京都知事賞を受賞したのは、東京製菓学校の小島堅嗣氏。作品名は「Kouglof Feuillete Pomme Cannelle」、日本語にすると「クグロフ フィユテ アップルシナモン」となります。クグロフはアルザス地方発祥の発酵菓子で、独特のリング型と豊かなバター風味が特徴です。今回の受賞作品は、そのクグロフをフィユテ(折り込み生地)で仕上げるという技術的にも難易度の高いアプローチを取り、さらにアップルとシナモンという誰にでも馴染みのあるフレーバーを組み合わせている点が特徴的です。
受賞作品から読み取れる3つのトレンド
受賞作品の構成要素を分解すると、今後のベーカリー商品開発に活かせるヒントが見えてきます。
- 伝統技法×現代的アレンジ:クグロフという伝統的な発酵菓子をベースにしつつ、折り込み生地という別の技術を掛け合わせることで新規性を打ち出しています。既存の定番商品に一手間加える発想は、コンテストに限らず店頭商品でも応用可能です。
- 親しみやすいフレーバー選び:アップルシナモンは世界共通で愛される組み合わせです。技術的な挑戦をしつつも、味の入り口をわかりやすくすることで多くの人に受け入れられる設計になっています。
- 季節性の意識:アップルシナモンは秋の定番フレーバーであり、9月という発表時期とも重なります。季節商品の企画タイミングとしても参考になる事例です。
ベーカリー経営者が現場で活かせる視点
コンテストの受賞作品は、そのままの形で店頭に並べるのは難しいケースも多いでしょう。フィユテ生地を使ったクグロフは手間がかかり、通常の店舗オペレーションでは量産しにくい商品です。しかし、そこから抽出できる「考え方」は十分に商品開発へ転用できます。
例えば、定番商品に季節限定のフレーバーを掛け合わせる、あるいは通常のクグロフを扱っていない店舗でも、その造形や食感の組み合わせ方をヒントに、既存の菓子パンや惣菜パンに応用するといったアプローチが考えられます。
また、コンテストの受賞情報は販促にも活用できます。「今年の受賞作品にインスパイアされた秋限定パン」といった打ち出し方は、業界の動向に敏感な店というブランディングにもつながります。
コンテスト情報を経営にどう取り入れるか
パングランプリのような業界コンテストの結果は、単なる話題として消費するのではなく、以下のような観点で自店に落とし込むことをおすすめします。
- 受賞作品の技術要素を分解し、自店の設備・人員でどこまで再現・アレンジ可能かを検討する
- 使用されているフレーバーや素材の組み合わせを、季節限定メニューの企画会議に持ち込む
- コンテスト結果を店頭POPやSNS投稿のネタとして活用し、業界動向への関心を顧客に伝える
運営支援の現場ではこう考える
私たちは冷凍パンの製造や、スーパーのインストアベーカリー運営支援を通じて、日々多くの店舗の商品開発に関わっています。その現場感覚から言えるのは、コンテスト受賞作品のような「技術の粋を集めた一品」を、そのまま量産・多店舗展開することは現実的ではないという点です。フィユテ生地のような折り込み作業は、職人一人あたりの作業時間が読みにくく、複数店舗で品質を均一に保つのは非常に難易度が高い工程です。
実際、インストアベーカリーの現場では、こうした手の込んだ生地は「看板商品を1〜2品に絞り、それ以外は冷凍生地や半製品を活用して省人化する」という組み合わせ運用が成果を出しやすい傾向にあります。受賞作品からヒントを得るなら、フレーバーの組み合わせやビジュアルの発想は取り入れつつ、製造工程自体は自店のオペレーションに合わせて再設計することが重要です。私たちが冷凍パンの企画開発を行う際も、まずは「その店舗のスタッフ体制で無理なく再現できるか」を最初の検討軸に置いています。トレンドを追いかけることと、現場で回せる商品にすることは、必ずしも一致しない場合が多いというのが実感です。
まとめ
2026パングランプリ東京では、伝統技法と親しみやすいフレーバーを組み合わせた「クグロフ フィユテ アップルシナモン」が東京都知事賞を受賞しました。コンテストの結果は、そのまま模倣するのではなく、技術要素やフレーバーの発想を自店のオペレーションに合わせて再設計することが、経営に活かす近道です。まずは自店の商品開発会議で、受賞作品の構成要素を話題にしてみてはいかがでしょうか。
この記事の監修
パンフォーユー編集部