SNSを開けば「台湾カステラ」「韓国クリームチーズパン」といった投稿を目にしない日はありません。海外発のパンブームは一過性のブームで終わるのか、それとも定番メニューとして定着させられるのか——。この記事では台湾パン・韓国パンそれぞれの特徴とトレンドの背景を整理し、ベーカリー経営者が自店のメニューに取り入れる際の視点を解説します。
台湾パンの人気の背景と特徴
台湾パンといえば、まず名前が挙がるのが「台湾カステラ」です。ふわふわとした食感と、湯煎焼きによるしっとり感が特徴で、2018年頃に専門店ブームが起きた記憶がある経営者も多いのではないでしょうか。実はこのブームは一過性で終わらず、今も台湾スイーツ専門店やインストアベーカリーの一部メニューとして生き残っています。
台湾パンのもう一つの柱が「蔥花麵包(ネギパン)」に代表される惣菜系のパンです。バターと刻みネギを生地に練り込み、表面に香ばしく焼き色をつけるスタイルで、朝食需要と相性が良いのが特徴です。台湾では朝食文化としてパンが根付いており、忙しい朝でも片手で食べられる形状・味付けが磨かれてきた歴史があります。
- 湯煎焼きによる高い保水性としっとり食感
- ネギ・チーズなど惣菜系の味付けとの親和性
- 朝食需要にフィットする「片手で食べられる」設計
韓国パンのトレンドと特徴
韓国パンは、ここ数年でSNS映えと味の両立を実現したジャンルとして急成長しています。代表格は「マヌルパン(ガーリックパン)」「クリームチーズパン」「ソウルベーグル」などです。共通するのは、甘さと塩気、あるいは甘さとにんにくの香りといった対照的な味の組み合わせを一つのパンに凝縮している点です。
また韓国では大型ベーカリーチェーンがトレンドを牽引する構造があり、新作メニューの開発サイクルが非常に速いことも特徴です。日本でも韓国発チェーンの日本上陸や、韓国パン専門店の増加によって、消費者側の認知度は着実に上がっています。特に20〜30代の女性客層への訴求力は強く、来店のきっかけづくりとして機能しやすいジャンルと言えるでしょう。
- 甘×塩、甘×にんにくなど対照的な味の組み合わせ
- SNSでの見た目のインパクトを重視した設計
- 若年層・女性層への訴求力の高さ
日本市場での展開可能性と取り入れ方
台湾パン・韓国パンをそのまま日本のベーカリーに移植しようとすると、原材料の調達や工程の違いから壁にぶつかることが少なくありません。例えば韓国パンで多用されるモッツァレラチーズやガーリックバターソースは、日本国内でも入手可能ですが、コストや配合バランスの最適化には試作の積み重ねが必要です。
現実的な導入ステップとしては、まず「看板商品を丸ごと再現する」のではなく「自店の定番商品に海外トレンドの要素を一部取り入れる」ことをおすすめします。例えば、通常のクリームパンにガーリックバターソースを絡めた韓国風アレンジや、食パン生地に台湾カステラの湯煎焼き製法を応用するなど、既存の技術・設備の延長線上で試せる工夫は多くあります。
- 看板商品の完全再現ではなく「要素の部分導入」から始める
- 既存設備・技術で対応できる範囲を見極める
- 期間限定メニューとして小さくテストし、反応を見て定番化を判断する
現場から見た実際のところ
パンフォーユーは冷凍パンの製造・卸を通じて、全国のスーパーやインストアベーカリーと日々やり取りをしています。その現場感覚から言えるのは、海外トレンド系のパンは「単品の人気」よりも「棚全体の見え方の変化」として効いてくるという点です。台湾カステラや韓国風クリームパンを1〜2品並べるだけで、売場の雰囲気が一気に今っぽくなり、通りがかりの客の足を止める力があります。
一方で、インストアベーカリーの運営支援をしていて頻繁に相談を受けるのが「トレンド商品は仕込みの手間がネックになりやすい」という悩みです。ガーリックソースの絡め工程や湯煎焼きは、通常のライン作業に組み込みにくく、人手が限られる店舗ほど負担が大きくなります。この課題に対しては、ソースやフィリングの部分だけを事前調製した冷凍生地・冷凍パンとして導入し、店舗では焼成・仕上げのみを行う体制にすることで、トレンドメニューを無理なく維持している店舗が実際に増えています。トレンドを追う際は「話題性」だけでなく「自店のオペレーションで無理なく回せるか」を必ずセットで検討することを、現場からはおすすめします。
まとめ
台湾パン・韓国パンは一時的なブームではなく、朝食需要やSNS映えといった明確な背景を持つトレンドです。丸ごと導入するのではなく、自店の商品に要素を取り入れ、小さくテストしながら定番化を判断していくことが、無理なくトレンドを味方につける近道です。
この記事の監修
パンフォーユー編集部